感情を余り表にださない人だということは数ヶ月の付き合いで理解してきたつもりだ

けれど理解しているからといって不満でないわけではなく。

時々本当に想われているのか不安にかられたりもする

それを確かめる術をもたないあたしは

どうしたら貴方の気持ちを知ることができるのだろう











天邪鬼な 果実










太陽はギンギンにその光を降り注ぐ



空は真っ青




絶好のドライブ日和















「あーーー!!!腹減ったぁ!!」










真夏を彷彿とさせるような気候の中

狭いジープの中でもう何度目かわからない叫びをあげた悟空







「だぁぁぁあっ!!うっせぇな猿!!」






それに呼応するかのように苛々と髪をかきあげて叫びかえす悟浄と




「……うるせぇ」



煙草をくわえながら低音で呟く三蔵のかもしだすハーモニーは

お世辞にも美しいとは言えない








あたしは大きく空を見上げた








舞う砂埃








反射する光








悟空ではないけれど確かに休憩はしたいかもしれない

暑さによる汗がつぅーっと首を伝う









「八戒ー。あたしも休憩したい」






の間延びした声が奇妙な程静まり返ったジープ内に温く篭った








「…そうですね。もう随分休憩なし走っていてジープも疲れているでしょう。少し休みましょうか」





それから確認するように三蔵を見る




「……ああ」




頷く男を見るやいなやわっ、と沸き上がる車内







「〜〜〜っ!!うるせぇっ!お前等今すぐ降りろ!」






暑さのせいか

はたまた後ろから聞こえるお祭り騒ぎのようなふたりの声のせいか

おそらくどちらもだろう

怒鳴る三蔵の声をBGMにジープはゆっくりと停車した






















ジープから降りたあたし達は木陰に競うように駆け寄る






「…なんか食いもんの匂いする」




木の下にきてから数秒もしないうちに悟空が辺りの空気を嗅ぎながら言った




「食いもん?そりゃまぁ果物くらいはなってっかもしんねぇけど」




同じように鼻をくんくんさせながら悟浄が答えて





「俺っ探してくる!」




「あっおい!……ったく!」





林の中にかけていく悟空を悪態をつきながらも悟浄が追い掛けていった









「ふたりとも行っちゃった…」







はぽつんとそう呟いて。




「じゃあ…あたしはお水でも探してこようかな」




そう言っていつのまにか隣にいた三蔵を見上げた




「…で。三蔵一緒に行こうよー」





見上げる三蔵は汗ひとつかいていない涼しげな顔をしている







「…ひとりで行け」







「えー……」







さらっと突き放すような事を言う三蔵に胸の奥がきゅっとなる






「じゃあ僕と行きますか?






その声につられるように八戒を見上げた


彼もまた暑さを微塵も感じさせないようすで佇んでいて






「あ、……」



「ガキじゃねぇんだ。そんくらいひとりでも平気だろ」






答ようとしたあたしの声を遮って三蔵はそう言った







「……っ!もういい。ひとりで行く!」




あたしは三蔵と目を合わせないようにしながらそう言ってくるりと背を向けあるきだした

















ずんずん気の赴くままに足を進める




三蔵は、冷たい



あたしの中で血が煮えたぎるようにカッカと躯を巡る

確かにひとりで行けないことはないけれど。




でもあたしは少しでも長く三蔵といたいだけだ




三蔵はあたしと同じ気持ちじゃないのかな

あたしが三蔵を想うほど三蔵はあたしを想ってはくれていないのかもしれない



そう思うと何だか無性に哀しくなってくる






こんなに好きなのは、あたしだけ…?





目に浮かぶ涙を零さないように空を見上げる



太陽は腹立たしいほど輝いていて

涙を我慢しているせいか喉が焼け付くように熱くなる

それでもあたしは目頭に力をいれてぎりぎりまで溜まった涙を零さないように慎重に歩くんだ



今ここで泣いてしまったら自分の制御がきかなくなるような気がして。




は見上げる先の太陽を睨むように見つめて己に克をいれた




そしてまた一歩足を踏み出そうとした時






「お尋ね者の三蔵一行だな!」




「ちょうどいいことに女ひとりだ!」






林の奥から薄汚い面をした妖怪が現れた






「くくく…人質にしてもいいな!」



舐めるような目つきでを眺める妖怪たちに悪寒がはしる






どうしよう……!





力で負けない自信は、ある

ただ向こうは少なくとも数十人いる


女のあたしがひとりで戦うには些かきつい





だけど。




今ここにはあたししかいない






考え事しながら歩いていたからどのくらい奥まで来たのかはわからない

だから妖怪の気配に気づいて三蔵達が来るとしても

その前にあたしは彼等の餌食となっているかもしれないのだ








一か八か。





真っ向から戦うしかないのかもしれない











……三蔵











心で一度強くその名を呼ぶ




一番愛しい人の名を唱えれば

勇気がでるような気がしたんだ。
















パァンッ













耳をつんざくような銃声があたりに響いた



あたしの躯は凍ってしまったかのように固まって。










だって








本当に?










半ば疑心暗鬼の気持ちは後から聞こえてきた静かな声によって確信へと変わる



「…三蔵は俺だ。死にたいやつは来い。遊んでやる」


急いで振り返るあたしの目にうつるニヤリと笑う三蔵に躯から力が抜けて。


安心感とともに涙が次から次へと溢れ出てきた



怒り狂った妖怪たちの叫び声も銃声の音も耳にはいらない


すべてが無音状態で動きだけが目にうつる







だって


嬉しくて







あたしがいた場所は三蔵のいた場所からかなり離れていたはずだ

それにも関わらず間一髪あたしが襲われる前に三蔵は現れた






ねぇそれは




あたしが歩いて行ってからいくらもしないうちにあたしを追い掛けてくれてた、って事でしょう?




どうしよう


三蔵のそんなさりげない優しさに気づいてしまった






一見冷たくみえる彼は

実はすごく、あたしを想っていてくれるのかもしれない



そう思うと涙がとまらなくて。




あたしは三蔵が妖怪をひとりのこらず退治する迄ずっとただただ涙を流し続けた







とても、優しい涙を。




















「…おい。」


いつのまにかあたりには静けさが戻っていて


「えっ…ああうん。なに?」


は涙の残る頬をぐいっと拭うと三蔵を見る


散々涙を流したせいか今とてもすっきりとした気分だ



「……行くぞ」



あたしより少し前方に立つ三蔵はそう言うとさっさと前をむく



「あっ…三蔵ありがとう!」



そう言うと慌ててあたしはあたしを待つように佇む三蔵の元に走っていく









え………?








彼との距離が近づく





それと同時にあたしの目にとまる、彼の一部



それはあたしに向けて差し出されていると自惚れてもいいのだろうか







すっ、と後方に向けられた三蔵の手にあたしは躊躇いながらもそっと手を重ねた





あたしの手が三蔵の手に触れると彼は柔らかくあたしの手を包んでそのまま歩きだす


普段は見れない穏やかさで。







初めて繋いだ三蔵の手は思ったよりもずっと優しくて

ずっと温かかった


















あなたの態度に不安になることなんて日常茶飯事だ




だけどその裏に垣間見える優しさにあたしは今まで気づかなかっただけなのかもしれない















これからまた不安になった時は

繋いだ手の温度を思いだすから。









たまにはこうやってまた手を繋いでね






















777HTありがとうございます。章姫様へ三蔵夢です。
どうでしょう、リク内容に添えていますかね!!?
なんだか若干三蔵じゃない気がいたしますが、大目に見てやって下さい!!(土下座
こんなヘタレサイトと管理人をこれからもどうかよろしくお願いします!
(0707 如月亜夜)