『ごめんラビ……迷っちゃったみたい……』 『………………………アホか』 がっしりとした石造りに覆われた中世の雰囲気漂うある街に訪れたとラビは新たなイノセンス発掘の為、二手にわかれて街の探索にでていた 「あたしから言い出したのに迷うとか……最悪」 一通り街を見てまわって最初に決めた待ち合わせ場所に戻ろう、と思ったあたしは くるりと振り向いたところで今自分がどこにいるのかさっぱりわからなかったことに漸く気付いたのだ 狭いうねるような道が続き見上げた建物は皆重曹の石造りの高い家家。 知らない街や場所に出会うとつい浮かれてざくざく歩きだしてしまう性格は今に知ったわけではないというのに。 はぁ…。 ひとつ溜息をついて無線用のゴーレムを使ってラビに連絡をとることにした 己の不甲斐なさに情けなくなる ラビにあんまり迷惑かけたくないのに、な。 ラビに限らず人には必要以上に迷惑をかけたくないと思うのは自然な事であろうがとりわけ好き、というか気になる人に情けない姿は見せたくないもので。 渋々連絡をとるとラビはしばしの沈黙の後呆れたように呟いた 『で。今は何処にいるんさ?』 『えーっと……何処だろう…』 なにしろ地図を読むより足を使って実際歩き回るほうがしょうにあっているあたしはやっぱり自分の現在位置が把握できていなかった 『…なんか目立つような建物とかねェ?』 『目立つ建物…?うーん…高い町並みが延々続いてることしか…』 迷ったら迷ったで周囲にこれといって目印になるような建物もなく。 どうせ迷うならもっとわかりやすいとこで迷うんだった 今更後悔しても何の役にも立たないことは、重々承知でありながら落ち込んでしまう 『…わかったさ!そっから動かないでちょっと待ってろー』 だけどラビはそんなあたしを捜しにきてくれるみたいで。 『……うん。待ってる……ありがと、ラビ』 一瞬迷ったと感じた時に不安で冷たくなった心は今や落ち着いて、緊張で強張った頬は安心感のせいかもとどおり緩みをみせていた ゴーレムの通信を切ってラビが現れるのを空を見上げて待つ 建物の隙間から見える青いガラス板をはめたような空は見上げる限りどこまでも続いていた じっとりと汗ばんだ額に乾いた風がゆるゆると通りすぎていく ラビ、まだかなぁ… 待ち遠しくて空を見上げる目をいっそう開いた時 「〜〜見つけたさ……」 「!?」 聞こえた声に慌てて振り向くと大槌に跨いだラビが呆れたような、けれど優しい笑顔を浮かべて空に浮かんでいた 「ごめんね…ホント方向音痴で…」 ラビの大槌に一緒に乗せてもらって空中飛行と洒落込みながらは小さく謝る 「もう今度からは絶対ふたりで行動するぜ」 「はーい……」 いたたまれないような恥ずかしさがほんのりと躯を包むがそれはそんなに嫌なものではなかった 「さて。んじゃ本格的に捜すとするかぁ」 再び地上に降り立ったあたし達は例のイノセンス捜しに取り掛かることにした 「コムイによると確か……」 ラビがあたしの隣でイノセンスについて呟いている間、あたしは彼の隣でぼーっと景色を楽しみながら歩く あたしが迷子になるのは今日が初めてではなくて。 彼の役に少しでもたとう、と張り切れば張り切るほどそれは仇となってかえってきてしまう そのたびに彼は呆れながらもいつもあたしを捜してくれる 彼が心細くなった迷子のあたしの元に現れる度、あたしは不安や孤独から解放されるのだ もしかして。 ふと、心に浮かんだ想いに戸惑いながらも案外それは間違いではないのかもしれない あたしは、ラビに捜して欲しくて無意識のうちに迷子になるのかも、 そしてあたしを見つけてくれた時のラビの温かい笑顔が見たいから。 だとしたら、あたしは相当彼に溺れているのだろう。 色々と複雑で矛盾した想いが絡まりあって、だけどそれらは全てラビが好き、という純粋な想いに繋がっているのだ けれど同時にいつも漠然とした、そしてそう遠くはないであろう未来にたいしての不安があたしを取り巻く ラビは、ブックマンの跡をいつかは継ぐ ブックマンを継ぐということは乃ち名を捨てるということ、ラビはもう『ラビ』でなくなってしまうのだ いつだったか彼はラビは本当の名ではなく、本当の名はブックマンを継ぐと決めた時に捨てたと言っていた だけど、あたしにとっての彼は『ラビ』であってラビ以外の名では彼ではないのだ だからいつか彼をラビと呼べなくなったら。 あたしの中のラビではない、別の彼になってしまう気がする あたしは今までラビ、という彼の名前にたくさんの感情を込めてよんできた それがブックマンと、裏歴史を記録する人達の呼称の名で呼ばなければいけなくなるなんて。 我が儘をいうなればブックマンになんてなって欲しくない 勿論それはあたしの我が儘でしかなくて、それが叶えられる保証は万に一つもないのだ わかっているからこそ、やり切れなくて何もできない自分が歯痒くて悔しい 彼に嫌われたくないあたしは、彼の意に反す事、ブックマンになってほしくないとはどうしても口にできなくて。 ラビが、好きだから。 結局あたしは彼がブックマンとなるのを黙認することになるのだろう 仕方がない、ラビの人生はラビだけのものだ。 理性と感情はどうしてこんなにも遠くて違うのだろう そのまま歩き続ける事が出来なくて、あたしは足をとめた 隣にいた彼は前を歩いていってしまう。 どこまでも。どこまでも。 それはこの先に続く未来への道のようで。 あたしはひとり硬い地面に立ち尽くしながら離れていく彼の背中を見つめる 行かないで、ラビ。 行かないで。 それを口にできないあたしは臆病者で、感情の高ぶりで沸き起こった涙をぎりぎり落とさないように目に溜めることしかできない ねぇラビ。 あたしはいつまでこの名を口にすることを赦されるのかな 乾いた風がゆるりと瞳に溜まった涙を零した 「アレ??」 ふと自分の隣に目をやったラビはそこに誰もいないことに気付いて焦って辺りを見回す 「!!どうしたんさ!?」 くるりと後ろを振り返って随分後方に佇むを見つけると驚いて駆け寄っていく 「ラビ……」 また彼に迷惑をかけてしまった、という気持ちと、気付いて駆け寄ってきてくれたことにたいする嬉しさがごちゃごちゃにあいまってまた涙がひとつ落ちた 「なっ泣いてんのか!?」 駆け寄ってきた彼は目もあてられぬ動転ぶりで、思わず苦笑にも似た微笑みが零れる 「どっか痛いんか?」 心配そうにあたしを覗き込んで服の袖で涙を拭ってくれる彼は、何だかお兄ちゃんみたいだ そのままあやすようにあたしをポフッと抱きしめる彼に同じように腕をまわす 硬い胸板からとくん、とくんと聞こえてくるラビの鼓動に安心する 彼の温かい躯に縋るように頬を押し付けて目を閉じた 「なんかラビってお兄ちゃんみたい」 そのまま思ったことを漏らせばあたしを抱く彼の腕に一瞬力が篭って。 「兄貴はちょっと勘弁だな」 困ったように息をはいて言った彼に思わず顔を上げる 微かに拒否されたように感じて胸の奥が不安げにきゅっと疼いた 「俺はの兄貴になりたいわけじゃないんさ」 その台詞をきいて、何となくわかったような気がしたけれど、確かな確証が欲しいと思うあたしは欲張りなんだろうか 何も言わずに彼を見つめて、穏やかながらも心臓は通常より速く鼓動している その鼓動が彼にも伝わりそうで、いや、もう伝わっているのかもしれないけれど。 そうして一瞬ラビの顔が近くなって、ぁ、と思った時にはすでに柔らかい彼の唇があたしのそれに押し付けられていた 目を開いたまま閉じることも忘れ、感じた事は涙がいつのまにか渇いていたことと、やっぱりあたしはすごくラビが好きだ、ということだった 彼の赤い髪がふわりと風に吹かれて揺れる 触れ合うだけの、けれど長く感じたキスをして再び彼に包まれていたあたしは、彼の照れたような声で漸く正常な思考が働きだしたらしい 「…そろそろ行くさ」 「ぁっ…うん……!」 キスをしていた時よりも今のほうが何か恥ずかしい気がするのは勘違いじゃないだろう また彼の隣に並んでたわいない話を再開する このキスで彼の未来やあたしの未来が変わったわけではないし、いつか必ず訪れることも覚悟している それはやっぱり辛いし、できるなら回避したいと願うけれど。 ラビは、たとえ名が変わったとしてもラビで、あたしが持つ彼にたいする感情は今までもこれからも増しこそすれ変わらないのだ 気付くのが遅すぎたとは自分でも思うが気付かせてくれたのは他でもない彼であって、 そしてその彼の行動によって気付けたことは幸福以外の何ものでもない ふと、彼を見上げたら調度こちらを見下ろした彼と目があった 優しげに目元が孤を描く彼の笑顔にあたしも見合うくらい笑えているか、それはきっと今まで以上に。 ラビと心が通じあったあたしはもう弱い気持ちにも負けないくらい無敵となった ラビが好き。 さっきと同じように見上げた建物の隙間から覗く青いガラス板は、今までで一番綺麗に見えた いつかくる
未来に負けそうになったとしても。この想い、変わらずに。 どうしよう!ラビ可愛すぎて&かっこよすぎてひとり萌えーなあたしがラビを書いちゃいましたよー ちゃんとラビになってますかね!? 話し方がいまいちまだ掴めません。。 こんな感じで最近BLEACHより他の夢が日々増えていっているのでしたー (070731 如月亜夜) |