例えるならあたしはこの部屋のように暗い存在で、そこに連れ込んだアナタは太陽みたいなたったひとつの燭なのかもしれない


















最近眠りが浅い。

眠ったようで眠れていないのだ



「……………」



(今何時だろ…)



僅かに開けた目で部屋をぼんやりと写すがそんなことは大して意味をなさない

彼の部屋、というか廃墟であるここは瓦礫や使わなくなったコンクリートの塊が散乱しているしここはまだ整理されているとはいえ、光なんて差し込む隙間がないのだ


起きぬけにもかかわらずすっかり眠りから覚めた脳で日付を確認する


(クロロが仕事にいってから二日か)



まだ起き上がりたくはないのでゴロンと寝返りをうちながら蒲団に顔を埋めてみた



(……クロロの匂いがする)



多少変態ともとれる行為ではあるがいかんせん本人がいないわけだし。


あたしに与えられたベッドも彼のベッドも物的には変わりはないのだが、
何となくいつも彼が寝ているベッドで寝れば少しはこの寂しさにも似た憂鬱な気持ちから逃れられそうな気がして。



蒲団から目元だけをだすとサイドテーブルに燈るランプの柔らかい光が目に入った



入った……え?



思考停止、なんてそうそうしたことなんかないがまさしく今それに陥っている

柔らかいランプの光はぼんやり部屋を照らし……た、まではいい



(なんでここで寝てんのコイツ……?)



開いた目を瞬きすることも忘れ目に入った隣でスヤスヤと眠る男を凝視、いやガン見した



(やっぱり寝顔も綺麗だなァ…じゃなくて!帰ってきてたの?それならそうと言ってくれれば…ってあたしが寝てたから言えなかった…とか?)


そんな気遣いができる男かは不明だが(だって初対面で拉致られたし)そこはまだいい



問題はあたしの隣で寝てること!!



驚きもだんだんと鎮まり次に浮かんでくるは疑問という名の不信感だ


(なんだってあたしのベッドで寝てるわけ?意味わかんな……)


それまで微動だにせず些か睨むように隣を見ていたはそこでまたしても一瞬思考が停止するのを感じた


(ってァァァア!ここクロロのベッドだったァァア!)


内心湧き出てくる冷や汗を感じながら躯を動かすことができない


(さ、最悪…クロロにクロロのベッドで寝てるとこ見られた……!)


しかも寝ているとはいえ現在進行形でだ


(恥ずかしい…というよりガキって思われたかも……いや、それよりも!)



まずはこの状況打開!



この男が起きる前になんとかここを抜け出してアパートに戻ろう

それで何食わぬ顔して時間がたったころここに帰れば寝ぼけてたんじゃない?って切り返すこともできるし!


我ながら冴え渡る考えに軽く口角を上げたはソロリと躯を端に移動させ……れなかった



「……起きたのか」



ヒイィ!なんて声がでないようなんとか唾を飲み込んだが突然の事に頭が対処しきれない


「あ、えっと……おかえり…?」


固まる頭と躯で何とかそれだけ言うが結構至近距離にある彼の視線にもう逃れることは無理だ、と悟ってもいた


「…ああ。」


静かに呟いたクロロにこれから問われるであろう質問を感じて耳を塞ぎたい衝動にかられる



「で、。お前は何で俺のベッドで寝てたんだ?」



(キタァァァァア!!)



一見表情は変わらないように見えるが実はわかっていて言ってる、ということが見てとれる


「……寝心地良さそうだったから…」



視線を逸らしたいのにどうしてもそらせない

動揺を押し隠してそう告げたはけれど、クロロにそれが通じるとは思っていなかった



(だてに毎日一緒に暮らしてないからね…あーでもホントどうしよう)



「…そうか」


思わずぇっ!?、と漏らしそうになったがそこは根性で押し止める


(通じた…?てかクロロって阿呆だったり…)



「きゃ!?」



急にさっきまでクロロの方を向いていたあたしの躯は強い力によって仰向けにされていた



「何すんの……」



それだけ言うのが精一杯のあたしの目にうつるのはぼんやり照らされた天井と薄く笑うクロロで。


「本当の事を言わないんだったらお仕置きだな」



「だからペットじゃないって!…それにホントだし…」



押さえつけられた腕と見上げたところにあるクロロはいつもより男に見えて、そして少し怖い


「それより離してよ!あたしもう起きるから」


腕に力をいれてみても動かないし躯に馬乗りになってさりげに足も押さえつけられているため動かすことができないのがまた恐怖を煽った


「クロロっ!」


そして少なからずそれに、クロロに押し倒された事に心臓が強く鼓動した自分自身にたいして戸惑いも感じている


ともかく落ち着くためには離してもらう必要があるのだ


再度名を呼ぼうとしたの口は、けれど一瞬にして近づいたクロロに驚き言葉をとめた




「本当に…離してほしいのか?」



当たり前でしょ?と思った声はけれどはっせられる前にクロロの、その何もかも見透かしたような目に見つめられてまたしても口から出ることはなかった


「どうなんだ、



「っ……」


あたしの気持ちなんて全部見抜かれているのかもしれない。

突如沸いてきた思いはあながち外れてはいないだろう


確かにあたしはもう彼が嫌いではないし、彼がいない間寂しかった。でも……



「沈黙は肯定ととるからな」



「ぇっ……んふっ…!」



じっ、と思いを巡らせていたは耳に入ってきた声に驚いてクロロを見た



「んっ……はぁっ……クロ、っ……!」


けれどすでに反論の言葉はクロロによって封じられていたのだ




「……ふぅっ……」


貪るようなくちづけはあたしの口内も頭も可笑しくしていく

逃げようともがく舌もあっさりと捕まえられて彼の舌がうごめく度、無意識に躯が反応していた


何度も角度を変える度、どうにか離れようとするも更に深くくちづけられて涙ばかりが溢れる


あたしはすでに意識も朦朧としていたし、また彼の舌技に巧みに酔わされていたのだ



いやらしく唾液が糸を引き、呼吸もままならないまま薄いパジャマは脱がされていく



「やだっ……クロロお願い…やめっ!」


懇願するように未だクラクラする頭で呂律も回らないまま言うが、彼は気にも止めずやわやわと二つの膨らみを撫で始めた



「んっ……ぁっ…やだっ……」


くるくると孤を描くように撫でられたかと思えばだんだんと存在を主張してくるそれを摘んだり、また口に含んで転がしたりをする


力の入らない腕で何とか抵抗するものの、彼には全然関係のないようだ


いつのまにか脱がされていたパジャマも下着も、そんなものはどうでもいいからとにかく止めて欲しかった



「あっ……や、だ…クロロやめてっ……ああんっ」


くちゅ、と音をさせたそこは自分でも恥ずかしくなるくらい濡れている



「抵抗するわりにはこんなに濡れてるけど」



笑いを含んだ彼の声にそう指摘されて恥ずかしさで躯は更にほてってくるし今すぐ死にたくなった



「ひゃっ、あっあっ……やぁっ…!」


体内に侵入してきた彼の指に躯が大きくのけ反る

ゴツゴツとした綺麗な指が今自分を犯しているのだと思うといてもたってもいられないくらいで。


「やだぁっ……はっ…ぁぁっ…」



抑えようとしても出てくる喘ぎ声に腹が立ちながらも半分意識は快感にそまっていた



、もう一度聞く。何で俺のベッドで寝ていた?」



くちゅくちゅとわざと音をたてるようにしながらクロロはの耳に息がかかるようにして囁く


「あんっ……そんなの、っ……わかってるくせ、に…ゃぁっ!」


もう視界は涙でぼやけていたから上手く睨めていたかは定かではないが。



の口から聞きたい」



「やぁぁぁぁあっ!っ……はぁっ、ぁっ…」


絶頂を迎えた躯はまだビクビクと震えながら更に蜜が溢れる感覚がする




「や、ホントに……クロロ……」



グイッと足が持ち上げられて懇願するが容赦なくクロロ自身は入ってきた



「やあっ……ああああっ!」


指とは比べものにならない圧迫感が痛いくらいに気持ちいい

もうすでにの中では抵抗する思考も気力も残ってなどいなかった









答えを催促するクロロの声に僅かに躊躇うがそれももうどうにでもよくなるくらい与えられる刺激は的確で。



「…あっ、……さみし、かった…ぁぁんっ…から…っ!」



口を開いても突かれる激しさに舌を噛みそうになるがどうにか言い切った

の答えに満足気に微笑んだクロロはラストスパートをかけるように強く己を押し付け始める


「ああああっ……や、んっ……クロロっ……!」


限界が近いのを感じて縋るようにいつのまにか彼の首にまわしていた腕に微かに力をこめた




「っ…イきそうか……?」


彼も限界らしく普段よりも色っぽい声にナカがきゅっ、と収縮する

そして答えるように僅かに頷くとうっすらと瞳を開いた



「はぁんっ……あっ…!」


あたしの視線に気付いた彼はそのどこまでも深い闇色の瞳であたしを見つめて汗の浮かぶ顔でそっと微笑む




「やっあっあっあっ……あああああっ……!」





それは今まであたしが見たどの笑顔よりも優しいものだった














ふっ、とまどろみの中で意識がぼんやり浮上したのを感じてうっすら瞳を開く



目に入ったのは硬い筋肉がついたお腹で、そのまま視線を上げると柔らかい表情で眠るクロロがいた


そして腰には彼の腕がしっかりとまわされ寝返りもうてないくらいだ

その彼の寝顔を見ながら思わず呟きそうになった想いに気付いて驚くというよりはやっぱり、と微かに顔をしかめた



できれば気付きたくなかったこの想いは躯を繋げたことで明白になってしまったのだ

彼は興味本意であたしを側に置いているだけだし、さっきの行為だって暇つぶしか性欲処理のためだけだろう


理解してきたからこそ自分の内で眠っていた想いに気付きたくなかった



もう今まで通りではいられない、きっと。



心の中で今まだ眠っている彼に向かって問い掛ける


もしあたしが好きだと言ったなら、アナタはどうする?

その笑顔は消えますか?



そうして再び落ちていく意識につられるように目を閉じながらそっと彼の胸板に頭を預けた



これが最初で最後の温もりになると思いながらも今日は穏やかな眠りにつけそうな気もしていた











胸に一欠けらの なさを残して。だけどもう、えきれないよ。

裏はどうしても長くなってしまう運命にあるようで。
クロロ連載も残すところ後一話となりましたー!
最後までお付き合い頂けると幸いですvv
(070814 如月亜夜)