一生愛してくれますか? 「ふぁっ……やっ、ん…!」 鼻から抜ける甘えたような掠れ声にもう羞恥を感じる事も忘れてただ後ろから胸を揉みしだく彼の息遣いをきく 敷かれた蒲団は本来の役目は果たさずに、皺くちゃになったシーツの上にあたしは内股で座り 彼は覆いかぶさるようにしてその細く綺麗な指先であたしを弄んでいた 硬くなった胸の頂を刺激されるたび自分の意思とは関係なく躯が跳ねる 彼は時々そうやってあたしを虐めながらけれど確実にあたしを追い上げていく 後ろから聞こえてくる思わず耳を塞ぎたくなるような水音と躯の奥の奥まで突き上げられる衝撃にもうほとんど正常な思考なんて残ってはいなかった 躯を滑る汗は、今の季節が夏というのも関係してか異常なくらい溢れては肌を伝わり汗以外ですでにぐちょぐちょになったシーツへと落ちていく 「……声、我慢せんでええんやで……」 「んっ……」 低い声で囁かれそれから耳を甘噛みされて、躯を微弱な痺れが這う 開けっ放しの障子から温い風が肌に纏わり付くようにして吹き抜けていった 彼が少しでも暑さを紛らわそうと障子を開け、それに始めは賛成していたものの今考えるとそれは彼の思惑通りだったということが伺える だからはなるべく声を抑えながらも半分諦めて与えられる頭が可笑しくなりそうな快感に身を委ねていた 蝉の鳴き声がぼうっとした頭に切れ切れに紛れこんでくる それからあたしは一層強く声をあげながらふっ、と外に目をやって、曇った夜空から地に目線を落とした この部屋の主には似つかわしくない太陽を思わせるそれはじっと静かにこちらを見ている 向日葵。それと同時に浮かんでくる明るいあのヒトの笑顔に胸も呼吸も苦しくなった だけど何故か目をそらすことができなくて、それは目をそらしたら負けた気持ちになるからかもしれない 「…何、見てるん……?」 の頬にチュッとキスを降らしてからギンは彼女の視線を追うように外を見た 「あァ、アレか……綺麗やろ?」 彼はそう問い掛けるようにあたしに向かって囁いたがあたしが言葉を発するより早く彼自身を突き上げて言葉を発しさせてはくれない 「あああああっ…!!」 口から出るのは喘ぎ声だけで、刺激の強さに視界が揺らぐ 「はぁっ……あっ!…ん、ギン……アレど、した…の……?」 途切れ途切れに口にするのが精一杯だったあたしは、目の前にちらつく金色の髪の彼女の顔を忘れるように硬く目をつぶった 雑草すらあまり生えていない地に一輪だけ懍と咲き誇る向日葵は少し羨ましくて。 「…どうしたんやと思う……?」 「い、じ……わるっ…やあっ!」 はぐらかすような答えと意識を持っていかれそうな愛撫に微かに苛立ちを感じる ギンも、あたしと同じ事を考えていたとしたら? 嫌な予感に胸の奥が針で刺されたようにちくちくと痛む ギンも向日葵に彼女を思い浮かべていたとしたら? 「やあああっ!……あっ…あああっ!」 考えることさえ赦しては貰えない彼のもたらす快感に汗と一緒に涙が零れた 彼はやっぱり彼女―乱菊さんの事が一番なのか 目の端に写る黄金色のそれがあたしを咎めているようで。 今確かに繋がっているのはギンで、一番近いところにいるのはあたしの筈なのにどうしてか彼との距離が酷く遠くに感じられてならない 「…もうそろそろ限界とちゃう…?」 激しさを増す行為とは裏腹に胸の中は静かに落ち着いていた ギンを捕らえているのがあたしなら、ふたりの邪魔をしているのがあたしなのなら。 あたしは潔く身を引かねばならないのだろう だけど自分の口から言うのはつらすぎるから、きっと泣いてしまってギンに丸め込まれてまたいつも通りに戻ってしまう気がするから。 だからあたしは。 「あっあっあっあ……っ!」 半分虚ろな意識の中でギンが精を放つのを感じながらぼんやりと、だけど硬く心で呟く 彼が寝ている時に身を潜めよう、そしてもう二度と彼とふたりきりにはならない、と。 哀しい気持ちがないわけではなかったが、そうするのが最善だと行為の余韻に浸りながら目を閉じた うっすらと目を開けると明るくなりはじめた空が柔らかい光を放ちながらあたしたちを照らしていた ゆっくりと顔だけ隣に向けて、目に焼き付けるように彼の寝顔を見る 光にあたって淡く揺らぐ彼の銀髪に思わず手を触れそうになって、そしてそんな自分に失笑した 起こさないように細心の注意を払ってのそのそと蒲団からはい上がる ちらりと目をやった先の向日葵は昨日と変わらず誇らしげに顔を天に向けて咲いていた 色を変え始めた空につられるように縁側に足を踏み出す 昨日の余韻と暑さによる汗がじっとりと肌に纏って膝の裏まで汗をかいていた 結局ギンは何でこの花がここにあるのか、という質問には応えてくれなかったけど、もうそんな事はたいした事じゃない 幼い頃からの絆は死神になってから出会ったあたしには手が届かない程強かったってことか 何とも言えない寂しさを感じながら一回俯いて、急かされるように躯を反転させる 「っ………!!」 久しぶりにこんなに驚いた気がする 心臓が止まりそう、まさにそんな感じだ 振り向いたの目に写ったのは障子に手をついて通せん坊をしているギンだった 背の高いギンに見下ろされて、しかもどこか雰囲気がいつもとちがう 妙にそれに怖さと焦りを覚えてそっと目線をはずす 「起きたんだ………」 普段通りにそう言ってみるがやけに心臓はバクバクいったままで収まりをみせない 作戦、失敗か。 どうやって切り抜けようか考えを巡らせながら宙にはわした視線をもう一度彼に向けてみた そこにはいつもの微笑みはなくあるのは硬い表情だけだった あたしは貼付けたような彼の微笑みがあんまり好きではなかったからそれは別にいいのだが、 ここまで陰欝そうな顔をした彼を見るのは初めてだ 「………ギン?」 勘のいい人だから気付かれてしまったのかもしれない。 一抹の不安を抱えながら無言のままの彼を見上げる 「……どこ行くん?」 心臓が大きく脈打つとともに目が一瞬見開いてしまった 「…どこにも」 時には嘘をつくのも仕方がないと自分に言い聞かせながらうっすらと微笑む 「…嘘、ついたらあかんで……」 冷たいほどの視線が突き刺さる これなら例え貼付けたような微笑みでもいいから笑っていてくれたほうが数段マシだ 問い詰められることを覚悟して腹を決めなければ駄目か、と軽く溜息をつきながら今だあたしを見下ろしているであろう彼を見つめた 「何で嘘だって思うの?」 声に涙が混じった事は見ないふりをして、気丈にギンを見つめ続ける 「の事は誰よりもわかってるからや」 「なに、それ」 ふっ、と嘲るように笑ったら、一緒につうっと涙が一筋流れ落ちた わかってるなら素直に行かせてよ。 あたしの口から「別れる」なんて言わせないで。 言葉にしたら、それを現実に突き付けられる気がしてどうしても言えないの 「じゃあ、わかってるならあたしが今考えてることわかるでしょ?」 暗にそこをどいて、という意味を含めて挑戦的に問い掛ける 昇り始めた太陽は、今のあたしたちにはとてつもなく似合わないのだろう どうせだったら日暮れの時にでもするんだった 頭の片隅でそんな事を思いながら障子から外された彼の手をみてまたうっすらと微笑む さよならね、ギン。 意思に反して流れ続ける涙を恨めしく思いながら一歩足を踏み出した 「は……ボクと乱菊の関係を心配してんのやろ」 頭上から聞こえてきた確信をもった彼の声に踏み出した足がとまる 「心配って……?」 不規則に揺れる胸の奥を見透かしたようにギンは目線を合わせないの顎を持ち上げて顔を近づけた 「乱菊は大切や。それは変わらへん」 めったに開かない彼の瞳に見つめられて、顎を掴まれたまま大人しく彼の言葉をきく 「せやけど、と乱菊は違う。乱菊は乱菊、はなんや」 そう言う彼は真剣で、いまいち意味がわからなかったけどただじっと彼を見ていた そのうち腰に腕をまわされて強い力で引き寄せられる こんな時でも彼の腕の中は居心地がいい じんわり浮かぶ汗が膝の裏から足元に流れる感触がした 「ギンは……あたしが好きなの……?」 放心したような口ぶりで呟いて、様子を伺うように彼の顔に神経を集中させる 彼はちょっと困ったような顔で微笑んでからいつもとは比べものにならないくらいの軽さのキスをした それから両の腕ともあたしの腰にまわしてそのまま抱きしめる 密着した彼の躯もまた、汗をかいていた 思えば彼は冗談のように甘えて好きだ、とあたしに言うことはあったけれど、真剣にそう言ってくれたことはない気がする 彼の腕の中でぼうっと今のキスの意味について考えてみた その時偶然視界に入ってきた向日葵の花を横目で眺めて。 ごめんね。 涙を流しながら微笑んだあたしは所謂泣き笑いというやつだろう 昨日はとても遠くに感じた彼は今、一番あたしの近くにいる気がした 夏色
に浮かぶ向日葵なんかよりも。 ひっさびさのBLEACH夢!! 何だかアリキタリな気がしますがそこは目をつぶってやって下さい!(すみませ。。 最近シリアスがキテるあたしはヒロインを可哀相と思えるくらいにしよう、と思っていたのに。 天性のお気楽思考が邪魔をしてどうしてもハッピーなエンドになってしまう 不完全燃焼な部分もチラホラありますがこれはこれで良し!と腹をくくる事にしました。。 (070806 如月亜夜) |