こんな暑い、夏の日は 図書館ってめったに来ることなんてないと思ってたし、実際まったく立ち入ることはなかった。これまでのあたしの人生では。 しかもわざわざ図書館に出向くくらいなら家で勉強してたほうがよっぽど効率的じゃない? そうずっと思っていたあたしは、けれどそれが多いに間違った考えだったことに気がついたのだ 調度いい温度に設定された冷房 適度な静けさ 時々気分転換に目にうつる優しい緑 図書館って最高ですね! 今までそれに気付かなかったあたしは絶対人生の半分くらい損して生きてきたにちがいない それに冷房代の節約になるし! そんなわけであたしはここ数日図書館という恋人に通いつめる毎日を送っていた そもそも何で遊び盛りのあたしが図書館でひとりお勉強なんかに勤しんでいるのか 言わずもがな、もうすぐ試験だからである。 今度の試験で、とりたかった資格がとれるか否か決まる大事な大事ないわば運命のわかれどき! 落ちる、なんてわけには何があっても、そうスーパーカッコイイ彼氏ができたとしてもありえないの。 身寄りのないあたしは自分で生計を立ててかなくちゃならない だから将来安定した仕事に就くためにも絶対逃せないチャンスなわけで。 だからこうして休日返上で真面目に机に向かっていることになるのだ (ビバ図書館!あーだけどこの問題意味わかんないんですけど…) くるくるとペンをまわして必死に脳内の記憶を掘り出す。 (わーかーんーなーいー。あーくそ。なんかいらついてきた) 髪をガシガシ掻きむしろうとしてやめた いや、だって変な子に見られるの嫌じゃん? わかんない問題は一気にこちらの集中力とやる気を奪ってくから嫌だ (この問題解けないと先進めないんだよ) くるくる回していたペンがボトリと落ちた 「ねぇ。隣いい?」 思わずどおわっ!なんて変な奇声が口から飛び出しそうになるのをすんでのところで堪える 何度も言うがここは神聖な図書館なのだ。 「はぁ……」 (そんなあたしに断んなくてもいいのに…) とりあえず困惑ぎみに薄く微笑んでおく (そんな事より問題だ…!) 再び視線を机の上に向けながら、ふとかっこいい人だったなぁと思いを巡らせて。 (いけない、邪念邪念) 集中しようとしたあたしの耳に、潜められた低い声が聞こえてきた 「君さ、この後暇?どこか飲みに行かない?」 「………」 (これは…さっきあたしの隣に座ったはずの人の声…だよね) はちらりと目線を自分の右隣にうつす (かっこいー…じゃなくて。この人絶対勉強の為に来たわけじゃないよね) すらりと長い脚を組んで、全身真っ黒で染めた彼は髪も目までも真っ黒だった その中で異様に目立つ額にまかれた包帯のようなもの (怪我してんのかなー) 訝しげな視線で男を見つめていたは彼と目が合うとハッ、と我にかえった 「あの、あたし未成年なんで」 小さくそれだけ告げてしっかりとペンを持ち直す 「うん。見てわかるよ」 (わかるんなら何で声かけんじゃボケー!) あたしは溜息をつきたい気分でもう一度隣に居座る人を些か睨むように見る (ただでさえ問題解けなくて苛々してるのに更に苛々させないでよっ…!) は噛み付きそうな勢いでそっけなく告げた 「あたし集中したいんで。他あたってもらえません?」 いらついてる時のあたしは普段の三割増怖い。と評判だ だけどさすがに言い過ぎちゃったかな、とそろりと彼を見上げてみたら。 「くっくっくっ…」 笑っていやがりました。 何なのこの男。 それよりもう集中できない。 そう思ったは立ち上がるとそそくさと荷物をまとめはじめた 「それ、いいの?」 まだ何かあるのかと思ってしかたなしにあたしが見た彼が指差していたのは、さっきからあたしが悩んでいた問題がかいてあるノートで。 「…は……?」 (てか邪魔したのはアンタだからね?) 不機嫌な顔でがんたれるを見て男はまた含み笑いをしながら口を開く 「俺が教えようか?」 「いえあの結構です」 親切心はありがたいけどまず貴方から離れたほうがいいと感じるので。 手早くノートも鞄にしまうとはさっ、と踵をかえそうとした (は……?金縛り?) くるりと机に背をむけたまでは良かったがそのあと躯が動かない (何何何で!?) 徐々にパニクる頭と視界に入る笑う男 「これで退屈しないですみそうだ」 男はその黒い瞳を穏やかに細めながら、だけどあたしの背筋は寒くなるばかりだ 「さあ、いこうか」 (ていうかキャラ変わってません…?) 妖しく微笑んだ男は硬直したままのの躯を抱き上げて耳元でそっと囁く 「俺はクロロ=ルシルフル。君の名前は?」 耳元で直に聞こえた彼の声が、極上の悪魔の囁きに聞こえた (だってクロロ=ルシルフルってA級なんたらの…とにかくヤバイ奴だよね!?) 絶対
神聖領域 クロロとの出会い。 ヒロインのテンションがぶっとんでますね〜。。。 (070724 如月亜夜) |